触ってわかる容器ならどんな人も使いやすい

~花王の「きざみ入り容器」開発秘話~

1991年当時のエッセンシャルのボトル刻みつき 

 

日本で初めて、シャンプー・リンスの容器に触ってわかる識別用の“きざみ”をつけた花王。開発から実現までの経緯を聞きました。

 

髪を洗っているときは、みんな見えない

きざみ入り容器の発売は、1991年10月。翌年、1992年の5月までに全ブランドに展開しました。とてもスピーディな展開ですが、花王株式会社UD推進室の伊東美樹室長は、ここまでには入念な準備と調査があったと話します。

 

「社として、商品の性能はもちろんですが、デザインや香りなど、さまざまな感性を活かした商品開発の方向性を探っているときに、お客様から『シャンプーとリンスを間違いやすい』というお声が上がりました。意外に思って社内でアンケートを取ったら、『目をつぶって洗っているから間違える』というように、間違えた事があるという意見が多くあったのです」

 

これは研究に値するテーマだと考え、では実際に見えない方たちはどう区別しているのかを知るべく、盲学校の見学に行くことにしました。そこで伊東さんたちは、視覚に障害のある方たちの工夫を知ることになります。

 

「調味料は置く位置を絶対に変えないとか、シャンプーには輪ゴムを巻くとか、それぞれのルールがありました。ある女の子は、シャンプーをちょっと手に出して、においをかいでから洗うと言っていて、驚きました」 生活に密着した商品を提供する会社として、何かできることはないか。その思いが一層強くなりました。

 

「利益より貢献」で実用新案を取り下げ

当時、市場にあったシャンプー・リンスは、大きさ、色、デザインの違いで見分けるものでした。つまり、視覚ありきの識別。消費者は、必ずしも同じメーカーのシャンプー・リンスを買うとは限りません。やはり「触ってわかる」ことが必要です。

 

「試行錯誤しました。シャンプー容器に『シ』と入れたり、丸のマークを入れたり、きざみを入れたり。調査をした結果、きざみが一番識別しやすいことがわかりました」(伊東さん)

 

ただ、「きざみのところに汚れがたまりそう」という意見もあり、いくつも試作品を作った結果、きざみを浅くしてデザインに響かせず、でも触れば確実にわかる容器が誕生しました。使う方たちのことを思ったら、花王だけではなく、業界全体で取り組む必要がある。そう思って業界団体にかけあいました。

 

「開発当時は実用新案の申請をしていたのですが、それだと他社さんが二の足を踏んでしまう。実用新案による弊社の利益よりも、業界全体で実現していくべきものだと社長が判断して、申請を取り下げました。きざみ入り容器が新聞で取り上げられたりする中で、他社さんの足並みもそろうようになりました」(伊東さん)

 

そして1993年には、国内の多くのメーカーがきざみ入り容器に対応するようになりました。花王が開発してからわずか2年。これはお客様のためになる、と各社が確信した結果です。

 

花王ミュージアム

 花王ミュージアムにはユニバーサルデザインの取り組みも展示されています。

 

毎日使う商品だからこそストレスなく

きざみ入り容器は、「わたしが言ったからやってくれたのね」というご高齢の方や、「妹が糖尿病で目が見えにくくなっていたのでよかった」という方など、すぐに反応がありました。

 

「最近では、小学校の教科書に、盲導犬や点字ブロックのことと一緒にきざみ入り容器のことが書いてあるそうで、『初めは花王さんだったんですね、子どもに聞いて知りました』というお声もあって、うれしかったです」(伊東さん)

 

2015年には、全身洗浄料の容器にも識別できるラインのマークを業界で統一して決定し入れました。 洗濯洗剤や掃除用洗剤、化粧品などの生活用品全般を扱う花王では、似たような容器の識別をしやすくするためのシールを作成。視認性の高い文字表記や、触ってわかるマークなど、点字図書館を通して希望者に無料で配布しています。

 

人にやさしい、「うれしい」をかたちにする、人や社会とつながる。これが花王のユニバーサルデザインの指針です。「毎日使っていただく商品なので、どんな方にも便利で使いやすく、またストレスなく使っていただけるようにと思っています」(伊東さん)

 

花王株式会社

東京都中央区日本橋茅場町一丁目14番10号

1887(明治20)年6月創業、1940(昭和15)年5月設立。1890(明治23)年に発売した高級化粧石鹸「花王石鹸」が社名の由来。消費者起点の“よきモノづくり”を通じて「人々の豊かな生活文化の実現に貢献」することを使命に、活動を続けている。 点字付きのカテゴリーシールをご希望の方は、花王(株)社会貢献部までお申込みください。

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