生活を安定させ、人とのつながりを生み出す<後編>

~東京視覚障害者生活支援センター 後編 視覚障がい者の「うつ」~

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東京視覚障害者生活支援センター(以下、支援センター)の生活支援員であり臨床心理士でもある中津大介さんは、メンタルケアの専門家。視覚障がい者の「うつ」やその解消法についてお聞きしました。

 

中津大介さん

 

「見えにくい人」になって孤立する前に

見えていた人が目の見えにくい状態になると、見えない(見えにくい)現実を受け入れられずに苦しむ人が多くいます。

 

「『自分はまだ見えているから』と、障害者手帳を持ちたくないという人もいます。『視覚障害』という言葉に抵抗があるんですね」(中津さん)

 

視覚障がい者同士でも、保有視覚によって複雑な関係性が生まれることもあります。

 

「全盲の人からすれば、目の見えにくい人は『見える人』。でも、晴眼者と比べると目の見えにくい人は明らかに『見えない人』。アイデンティティに悩み、人間関係が難しくなってしまうこともあります」

 

支援センターのようなサポート施設の存在も知らず、助けを求めることができない方も大変多いそうです。「早めに来ることに意義があります。まずは、こういった施設の存在を広く知ってもらいたいと思っています」

 

視覚障がい者の「うつ」は特別なことではない

「いくつかの研究で、視覚障がい者の約50%がうつ状態にあると言われています。(※1)決して特別なことではありません」と中津さんは言います。

 

「晴眼者でも、経済的に困窮したり家族を失ったりすると強い不安に苛まれます。視覚障がい者も同じく、目の前の生活や将来の不安によって精神的に不安定になってしまいます」

 

その一方で、支援センターを利用する方でうつ病やうつ状態にある方の割合は、1割くらいと中津さんは実感しています。

 

「見えない不安を抱えつつも、訓練や補助機器の使用によって日常生活が安定し、就労できるという希望が見えてくると、精神面にも良い影響が出る」、と中津さんは話します。


「視覚障がい者のうつの原因は、視覚の障害による状況が、あまりに過酷なことによるものであることが多いと思います。まずは『できる』ことを増やして希望を持つこと、人と交流して支えあい、生活環境が安定してくれば、少しずつ精神面も安定していきます」

中津大介さん

 

 

必要な人に必要な情報を届けるために

心のケア=カウンセリングではありません。希望を持って人と交流し、自分の居場所を見つけること。そして、仕事をして経済的な安心感を得ること。生活の基盤、人生の基盤を作ることがまずは大切なのです。

 

「うつ状態から抜け出すためのカウンセリングをする前に、まずは生活の安定。カウンセリングは、その上に積み上げていくものですから」と、中津さんは言います。

 

支援センターでは、視覚障害の現実をしっかりと受け止めて、さまざまな支援サービスを受ける気持ちを持つところからサポートしていきます。

 

「『こういうセンターをもっと早く知りたかった』、『このサービスがあれば仕事を辞めずに済んだのに』という声をよく聞きます。今は、月に一度、東京女子医科大学病院に相談ブースを設けて相談会をしています。必要な人に情報が届くように、私たちも努力していきます」

 

支援センターや視覚障害に詳しい心理士は、少ないのが現状です。ですが、こういったサービスの存在を知ることは、新たな人生の第一歩になることでしょう。

 


東京視覚障害者生活支援センター

 

東京視覚障害者生活支援センター外観

1983年に東京都が設置し、日本盲人社会福祉施設協議会が運営してきた多機能型事業所。2017年4月から、同法人に民間移譲されました。

日中(通所)のサービスを提供しており、施設の見学会や訓練の体験会も定期的に行っています。

 


住所:東京都新宿区河田町10-10
電話:03-3353-1277
FAX:03-3353-1279

 

(※1)山田幸男:視覚障害者のこころのケア 視覚リハビリテーション研究 第3巻 第2号, P.66-69, 総説, 2014年3月25日

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