盲導犬と暮らす<後編>

4月の最終水曜日は国際盲導犬の日。前編に引き続き、盲導犬との暮らしを見てみましょう。後編では、盲導犬を受け入れた家族としての思いをお聞きしました。

 

盲導犬が助けてくれるので気持ちがラクになった

 盲導犬ユーザーである志賀信明さんの奥さま・道子さんは、弱視です。左目は見えず、右目は視野が狭く明るさがわかるくらい。全盲である信明さんとは盲学校からのお付き合いで、社交的で明るい道子さんはどこに行ってもムードメーカーです。

 

「初めてトリトン(初代の盲導犬)が来たときは、うれしかったですね。もし、わたしが病気になっても、夫とトリトンでコンビニや郵便局に出かけることもできる。これで倒れても大丈夫と思って(笑)、精神的にもラクになりました」。

 

もともと犬好きだった道子さん。三人のお子さんが家を出て自立したあとに盲導犬を受け入れることになり、家の中が明るくなったとか。

 

「お仕事をする犬なので、可愛がってばかりいてもダメなんですけどね。でも、わたしにとっては癒してくれるセラピードッグでもあるかな。夫婦二人だったのが、にぎやかになりました」。 盲導犬は、ユーザーだけでなく家族を助ける存在でもあるようです。

 

 

 

二代目のオースティンは、人見知りをしないのでどこに行っても人気者です。

 

盲導犬が来てから家族みんなが変わった

 盲導犬は、ユーザー自身が世話をすることが義務づけられています。ブラッシングから食事、排泄の世話まで家族が手助けをすることは許されていません。世話を通じてユーザーが日々犬との関係を築くことが大切なのです。

 

「犬のことでわたしが(家族として)やらなければならないことはありません。一つあるとすれば、使用者(盲導犬ユーザー)と同じ態度で接すること。叱ること、誉めることが人によって違っていたら犬は混乱しますから。夫は子育てにはどちらかというと無関心だったのに犬には一生懸命で、息子たちからも『ずいぶん待遇が違うな』なんて言われてます(笑)」。

 

信明さんは若い頃から自分に厳しい人で、他人を誉めることが苦手。以前はしかめ面をしていることも多かったそうですが、盲導犬が来てから変わったと話します。

 

「犬と歩くようになって、笑顔が増えました。犬を誉める訓練が、夫のためにもなったのかも。盲導犬は、一緒に歩くだけでなく、たくさんのことでわたしたちに貢献してくれているんです」。

  

 

志賀さんご夫婦とオースティン。すっかり家族の一員です。

 

すべての人が盲導犬を欲しがるわけではない

「目が見えない人も、一人一人違う」と道子さんは言います。「誰かに助けてもらいながら生活したいという人もいれば、できるだけ自分の力でやりたいという人もいます。自分のことで精一杯なのに、犬の世話までできないという人もいます。見えない人がすべて盲導犬を欲しているわけではない。『どんなふうに生活したいか』が大事なのだと思います」。

 

信明さんは、自分のことはすべて自分でする人。若い頃から意志の強い人です。ですが、全盲になったときはさすがに落ち込みました。でも、そんな信明さんに道子さんはあえてこんな声をかけました。

 

「見えなくなったの?でも仕事はマッサージなんだからできるよね?じゃあ大丈夫、子どもの学費がかかるんだからしっかり働いてね!」

 

道子さんの“愛のムチ”のおかげで、「たった2日間しか落ち込んでいられなかった」と笑う信明さん。二人三脚、いえ、オースティンと“三人四脚”で歩む毎日は、これからも二人の笑顔を増やしてくれるでしょう。

 

 

道子さんは一見すると弱視と気づかれないそう。「白杖を持っていても、声をかけられないことが多いですね」。

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