網膜静脈閉塞症にならないために知っておくこと<後編>

~高血圧は要注意信号~

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網膜静脈閉塞症は網膜の血管が詰まる病気で、いわば「目の中の脳卒中」。網膜静脈閉塞症を予防するには生活習慣病にならないような日頃のケアが重要です。

 

愛知医科大学医学部眼科学講座主任教授の瓶井資弘先生に、自己管理の方法についてお話しいただきました。

 

「見え方」を常にチェックしておく

自覚症状としては、視界にかすみがかかって薄暗くなる、ゆがむ、などがあります。「薄いグレーや黒い霧がかかっているように見える人もいます。それが一部分であったり全体であったりと、範囲はさまざまです」 はじめに異常を感じたときの見え方が、最終的な視力に関係してきます。

 

「初診時に視力が大きく落ちている人は、治療をしてもあまり視力は回復しません。見え方が変だなと思ったら、すぐに眼科を受診することが大切です」

 

高齢の方は、加齢の影響と見え方の変化を混同することが多いようです。

 

「年を取ったから、目も少しは悪くなるだろうと思ってそのままにしてしまう人もいますね。でも目に関しては、すぐに病院に行くようにしてください」

 

網膜静脈閉塞症は痛みはまったくなく、見え方に異常をきたすだけなので、日常的なセルフチェックは欠かせません。

 

「片目ずつ、上下左右の視界を見たり、障子やタイルなどの規則的な模様を見てゆがみがないかを確認します。特に、視界の上半分はあまり使うことがないので見逃しやすい。全体を見ることが大事です」

 

目は、片目が見えにくくても、もう一方が視力を補う特性があります。見え方は本人にしかわからないので、セルフチェックを怠らないようにしてください。

 

年齢の上昇とともに重症度も上がる

網膜静脈閉塞症の発症年齢は、60歳がひとつの目安になります(※1)。

 

「60歳以下の方の発症割合は1%未満、平均発症年齢は62、3歳です(※1)。もちろん50代で発症する方も80歳で発症する方もいますが、60歳前後になれば気をつけたほうがいいですね」

 

年齢が上がるとともに発症リスクが上がり、重症度が上がるのも、この疾患の特徴です。

 

「発症年齢が高ければ高いほど、治りにくいのも事実です。そのため、若い方でも、血圧の高い場合は生活習慣を変える、血圧を下げる薬を飲むなど、気をつけておいた方がいいでしょう。両眼に発症するのは5%くらいで、動脈硬化や高血圧を長い期間放置していた人に多く見られますから」(※2)

 

静脈の閉塞が強くなると、血液の行き場がなくなり、やがて動脈閉塞につながることもあります。場合によっては失明することもある病気なので、早期発見・早期治療を意識しましょう。

 

血圧管理と塩分控えめの食事が必須

予防で大事なのは、血圧の管理と塩分控えめの食事を心がけること。もちろん、血管を詰まらせる要因になるタバコをやめることも必須です。

 

「血圧については、135mmHg以下を目指しましょう。(※3)1日2回、朝と夜に測ってください。血圧は、目が覚める前が一番高い人が多いので、目が覚めてベッドから出たら(お手洗いはOK)、すぐに座って測る。顔を洗ったり食事をしたりして活動すると、血圧は下がることが多いです。何回か測って一番低い値を手帳に書く人がいますが、一番高い数値を記録しましょう。自分の数値を自分でチェックすることが予防と自己管理の第一歩です」

 

食事については、「外食(お弁当やレストランでの食事)を『しょっぱい』と感じるくらいの薄味に慣れる」のが大切だそう。

 

「すだちのような柑橘類やトウガラシなどのスパイスで味を補完することで塩分を控えることができます。さらに、カロリーを抑え、体重が2-3キロ落ちると最高血圧も10くらい下がることもあります(※4)。自分でできることはしっかり続けてください」

 

季節に合わせた血圧対策も重要

血圧は、室内と外気の温度差が大きくなる冬場に上がるといわれています。

 

「室内と室外の温度差が大きい冬は、温かい室内から一歩外に出ると血圧が上がりやすくなります。外出する際は、血圧の変化に特に気をつけてください」

 

冬はもちろんですが、夏場も血管の詰まり易い季節です。

 

「暑い時期は、脱水気味になり易く、血液がどろどろになって血管が詰まります。脱水に注意が必要なのは5月くらいから。一気にたくさん飲むのではなく、1時間ごとに一口飲むなど、こまめな水分摂取が大事です」

 

網膜静脈閉塞症の原因となる高血圧については、それぞれの季節に合わせた対策が欠かせないのです。

 

※1 引用元:Arakawa S, et al. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2011 Jul 29;52

※2 引用元:Hayreh SS Progress in Retinal and Eye Research 2014, 41;1-25.

※3 家庭血圧(家庭で血圧を測定する場合)の規準。 引用元:『高血圧治療ガイドライン2014』

※4 個人の経験

 

Dr. Kamei Profile

 

瓶井 資弘 (かめい もとひろ)

愛知医科大学

 

略歴

1988年 大阪大学医学部 卒業・眼科入局

1990年 国立大阪病院眼科 医員

1995年 大阪大学医学部眼科 助手

1996年 米国Cleveland Clinic, Cole眼研究所 留学

2000年 大阪大学医学部眼科 講師

2000年 京都府立医科大学眼科 講師

2002年 大阪大学医学部眼科 講師

2006年 大阪大学医学部眼科 助教授(2007年より准教授に名称変更)

2011年 大阪大学医学部付属病院 病院教授

2015年 愛知医科大学眼科 教授  

 

日本眼科学会評議員

日本網膜硝子体学会理事

日本眼循環学会理事

日本糖尿病眼学会理事

Vail Vitrectomy Meetingプログラム委員

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