強い近視による合併症に要注意<前編>

~「病的近視」の仕組みとは~

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近視が強くなった状態が「強度近視」、そこからさらに進むと「病的近視」という状態になります。病的近視のしくみについて、さやなぎ眼科院長 佐柳香織先生にお聞きしました。

 

近視→強度近視→病的近視と進行する

人は遠視状態で生まれ、体の成長とともに眼軸(角膜の頂点から中心窩までの長さ)が伸び、近視状態になっていきます。

 

「通常、眼軸の伸びは13~4歳で止まるのですが、止まらずに伸び続けるとやがて強度近視になります。そして、さらに近視が強くなることによって目に病気が生じた状態を病的近視といいます」

 

つまり、病的近視は病名ではなく状態の名前。「患者さんに『病的近視です』と伝えることはなく、網膜はく離など目に生じた病気の名前で伝えるので、『病的近視』という言葉にはあまりなじみがないかもしれないですね」 強度近視の定義は、眼軸が26.5ミリメートル以上になること。

 

病的近視の定義は、2015年にできたそうです。「それまでも病的近視という状態はあったのですが、疾患としての定義はありませんでした。2015年に、眼底にびまん性委縮以上の委縮性変化を有する、あるいは後部ぶどう腫を有する目、と定義されました」

 

自覚症状に頼っていると病気を見逃すことがある

近視自体は珍しくありません。眼鏡やコンタクトレンズで視力をフォローしながら生活している人はたくさんいます。

 

「近視が強くても、眼鏡などで視力が出せていれば気づきにくいのが現状です。眼軸が26.5ミリ以上になったとしても、すぐに合併症が出るとは限りませんし、もし合併症が出て病的近視の状態になったとしても、基本的に痛みは伴わないのです」

 

合併症によっては、急激に視力が低下したり、「ゆがみ」や「かすみ」といった自覚症状が出るものもあります。ですが、自覚症状のない合併症もあります。どうしたら病的近視に気づくことができるのでしょうか。

 

「目の病気は、時間をかけてゆっくりと進行するものがほとんどです。自覚症状の有無に頼っていると、気づかないうちに進行してしまいますので、視力検査などで近視が強いと言われたことのある方は、定期的に眼科を受診してもらいたいですね」

 

近視そのものは病気ではありませんが、近視が進むと自覚症状のないまま病気になることがある。そのことを覚えておきましょう。

 

目の中の大事な組織がさけたり分離したりする

強い近視が引き起こす病的近視。どんな病気を引き起こすのか、佐柳先生にご説明いただきました。

 

「まずは網膜の障害で、網膜はく離を代表とする近視性けん引黄斑症があります。これは、眼軸がのびることによって、網膜を前向きにひっぱる力と後ろ向きにひっぱる力のバランスがとれなくなり、網膜が“さけるチーズ”みたいに分離するのです」

 

また、目の中の組織が破れるケースもあります。「眼軸がのびて目にひずみが出ることで、ブルッフ膜という組織がやぶれ、そこから新生血管が生えてくることもあります」 新生血管と聞くと、新しい良いもののように感じますが、病的な血管なので決して良いものではありません。

 

「新生血管は、出血したり水分が漏れ出たりしやすいので、自覚症状が出やすいのです。視野の中心が暗くなったりゆがみが出たり、仕事や作業中に気づく方も多くいます」

 

病的近視は、比較的若い方にも起こりうる状態です。ちょっとした見え方の違いに注意しておく必要がありそうです。

 

後編では、病的近視の傾向や治療法について紹介します。

 

Dr. Sayanagi Portrait

佐柳 香織(さやなぎ かおり)    

 

略歴

2001年        神戸大学医学部 卒業       

                    大阪大学医学部眼科学教室 入局

2003年        大阪船員保険病院 眼科

2004年        大阪大学医学部大学院 入学

2007年        米国クリーブランドクリニック

                    コール眼研究所 Research fellow

2008年          大阪大学大学院 卒業

2009年        大阪厚生年金病院 眼科

2011年        淀川キリスト教病院 眼科

2012年        市立豊中病院 眼科

2013年        大阪大学医学部 眼科

2014年        大阪大学医学部 眼科 助教

2019年11月 さやなぎ眼科 開院、院長就任

 

大阪大学眼科メディカル網膜担当医

日本眼科学会専門医

光線力学療法認定医

日本網膜硝子体学会会員

日本眼循環学会会員

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