強い近視による合併症に要注意<後編>

~「病的近視」の仕組みとは~

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近視が進んだ状態で目の中に病気が起こる「病的近視」。なぜ病的近視になるのか、またどんな治療法があるのか、前編に引き続きさやなぎ眼科院長 佐柳香織先生にお聞きします。

 

近視は東アジア・女性に多いとされている

昨今、近視は世界的に増加傾向にあります。「近視についてはアジア人に多いことはわかっています。中でも東アジアは多いですね。また疫学調査では男性より女性に多いこともわかっています(※1)」

 

近視には生活環境も影響しているそうです。「高学歴であること、屋外作業時間が短いこと、睡眠時間が短いこと、これらは近視に影響します。だからといって、これらが病的近視にも等しく影響するかというと、そこはまだ解明されていません。病的近視も東アジアの人に多く見られるものではありますが、正確な分析が待たれるところです」

 

病的近視の研究成果として挙げられるのは、小児期における状態との関連です。「成人になってから病的近視になった人の83%(※2)は、小児期の段階で『びまん性委縮』が見られていました。成長の推移を随時確認したデータではありませんが、小児期の段階で病的近視になりやすい人をみつける可能性はあるかもしれません」

 

親が近視なら子どもも近視、といえるような遺伝子レベルでの傾向は明らかにはなっていませんが、強い近視と指摘されたら注意しておく必要があります。

 

目の病気とは上手につきあっていく

治療法と言っても、これらは合併症の治療であり、病気の原因となっている眼軸の伸びを治すものではありません。合併症の治療については、大きく分けて「薬剤注射」「硝子体手術」の二つがあります。

 

「治療は、発症した合併症によって異なります。脈絡膜新生血管の場合は薬を硝子体に注射します。はじめに一回注射して、その後は悪化したときにまた打つという形で治療します。近視性けん引性黄斑症の場合は、一般的に進行性の病気なので、牽引を除去し、正常な網膜形態に戻すために、手術をお勧めします。術後、うつむき姿勢が必要な場合もあります。緑内障を合併している場合は、点眼治療を行います」

 

複数の合併症がある場合は、治療を組み合わせることもあるそうですが、いずれにしても、医師と相談しながら決めていきましょう。 また、これらは合併症の治療であり、病気の原因になっている眼軸の伸びを治すものではありません。

 

「一回でも治療を受けた方は、定期的に眼科に通ってください。眼球の形状(眼軸の延長)が正常になるわけではないので、再発の可能性はあります」

 

目の病気は糖尿病や高血圧と同じように、長く付き合っていくもの。よくなったからといって、安易な自己判断はやめましょう。

 

自覚症状がなくても眼科に通うことが大切

今は、人間ドックで眼底検査をすることもありますし、眼科に行けば目の中を3次元で見られるOCTで検査してくれるところもあります。

 

「散瞳薬を使わず、それほど身体に負担も時間もかからずにある程度の検査ができるようになっていますので、ぜひ検査は受けておいてください。治療開始が早ければいい状態を保つことができます。早期発見、早期治療が大切です」

 

人生100年時代。できれば視力も長期間保ちたいもの。見えにくくなって困ることは人それぞれのようで、佐柳先生は、そこに男女差があると言います。

 

「女性の患者さんは、お知り合いの顔がわからないと会ったときに失礼だと気にされます。一方男性は、新聞やテレビなど情報が得られないことに不安をお持ちですね」

 

目に不安のある方もない方も、年に一度は、目を守るための検査をしましょう。近視が強い方は、自覚症状がなくても眼科に通うことが大切です。

 

※1 引用元:World Health Organization. (2015). THE IMPACT OF MYOPIA AND HIGH MYOPIA. Report of the Joint World Health Organization-Brien Holden Vision Institute Global Scientific Meeting on Myopia.

 

※2 引用元:Yokoi T, Jonas JB, Shimada N, Nagaoka. N, Moriyama M, Yoshida T, Ohno-Matsui. K. Peripapillary diffuse chorioretinal atrophy in children as a sign of eventual pathologic myopia in adults. Ophthalmology.  2016;123:1783-1787.

 

Dr. Sayanagi Portrait

佐柳 香織(さやなぎ かおり)    

 

略歴

2001年        神戸大学医学部 卒業       

                    大阪大学医学部眼科学教室 入局

2003年        大阪船員保険病院 眼科

2004年        大阪大学医学部大学院 入学

2007年        米国クリーブランドクリニック

                    コール眼研究所 Research fellow

2008年          大阪大学大学院 卒業

2009年        大阪厚生年金病院 眼科

2011年        淀川キリスト教病院 眼科

2012年        市立豊中病院 眼科

2013年        大阪大学医学部 眼科

2014年        大阪大学医学部 眼科 助教

2019年11月 さやなぎ眼科 開院、院長就任

 

大阪大学眼科メディカル網膜担当医

日本眼科学会専門医

光線力学療法認定医

日本網膜硝子体学会会員

日本眼循環学会会員

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