目を守るためにタバコをやめよう 後編

~喫煙が加齢黄斑変性に与える影響~

前編はこちら

 安川先生3

 

前編に引き続き、名古屋市立大学眼科学教室准教授の安川力先生に、禁煙指導の方法や、なぜ禁煙を勧めるのかについてうかがいました。

 

発症しても片目を守れば前向きになれる

安川先生が熱心に禁煙指導をするのは、“発症していないほうの目を守りたい”という思いからだそう。

 

「片目が加齢黄斑変性になったら、その目はもちろん治療をします。それと同時に、もう片方の目が発症しないように守ることも大事なのです」

 

安川先生によると、喫煙などの生活習慣を正していくことで、加齢によって溜まった脂に関連した慢性炎症が落ち着いてきて、発症予防に繋がってくるのだと言います。

 

「加齢黄斑変性になって視力が低下しても、もう片方の目が健康であれば、普通免許を持つことはできます。片目だけでも守れれば、病気のストレスも感じにくくなりますし、前向きな気持ちにもなれるのです」

 

禁煙は、現在の病気の勢いを緩和するという効果もありますが、それとともにもう片目の発症予防のために大切である。だから確実に勧めるのです。

 

治療と予防は医師と患者さんの共同作業

とはいえ、眼科医による禁煙指導が難しいのも事実です。

 

「つい医師も病気の目の治療に集中してしまいますし、患者さんのほうは、定期的に通院して治療しているから大丈夫と思ってしまいがちです。ですが、患者さんが目で困らないという意味では、病気の目の治療と反対の目の予防(や再発の予防)の両方が大事です。これを実行するために、医師と患者さんの共同作業だと思ってほしいのです」

 

治療については医師に任せ、禁煙やサプリメントや緑黄色野菜摂取などの予防対策については患者さんが自主的に努力する。この共同作業があってこそ、片目を治療し、もう片目を守るということが成り立つのです。

 

「私は初診のときから禁煙を勧めていて、毎回の問診のときには『タバコはやめたままですね』と聞いています。やめていない人には、その都度一日何本吸っているかを確認しています。『将来を考えると反対の目が大事なので、やめたほうがご自身のためですよ』と、禁煙を地道に勧めています」

 

頭ごなしでなく、患者さんの気持ちに寄り添って伝えること、吸っている人にはその都度吸っている本数を確認し、病状を見ながら少しでも本数を減らしてもらう。それが安川先生の禁煙指導の根幹です。

 

病気の予防にとって禁煙は大切

50歳以上の70人に1人が加齢黄斑変性(※1)を発症しており、3割前後の患者さんが両眼に発症(※2)し、結果、視覚に関する障害者手帳交付の原因疾患第4位(※3)となっています。

 

また、予備軍は7人に1人いると言われています(※4)。「加齢黄斑変性は、目の中で着々と加齢変化が蓄積し、いつ発症するかわかりません。今は何でもなくても来月発症するかもしれず、油断できない病気です。まだ発症していない方でも、予防の意味でタバコをやめておくことが賢明です」

 

しかし、発症したからといってあきらめる必要はありません。「加齢黄斑変性は、主に視界の中心の視力障害を起こすもの。両眼発症してもロービジョンケアをしっかりすることで、見える視野を活かして生活することができます。万が一、両目に発症しても、悲観的にならないでほしいのです」

 

病気については早期発見が大事なことは言うまでもありません。しかし、その前の“早期予防”も大事。タバコをやめることが早期予防につながることを、覚えておいてください。

 

引用元:

※1、4. 久山町研究 安田美穂**九州大学大学院医学研究院眼科学分野, 倉員眼科医院 あたらしい眼科  33(9):  1247-1251  2016

※2. 名古屋市立大学データ

※3. 日本における視覚障害の原因と症状 若生里奈.ほか:日眼会誌 118:495-501,2014

 

安川先生4

 安川 力(やすかわ つとむ)

名古屋市立大学

 

略歴

1993年 京都大学医学部卒業

1994年 北野病院

2000年 京都大学大学院医学研究科視覚病態学 助手

2000年 ドイツ・ライプチヒ大学留学

2004年 倉敷中央病院

2005年 名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学助手

2007年 名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学准教授

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