目を守るためにタバコをやめよう 前編

~喫煙が加齢黄斑変性に与える影響~

安川先生1

 

「タバコは体に良くない」と言われても、理由に納得できなければやめられるものではありません。名古屋市立大学眼科学教室准教授の安川力先生に、タバコが目に与える影響についてお聞きしました。

 

「加齢(老化)現象である体内物質の酸化」を増悪させてしまう喫煙

安川先生によると、加齢黄斑変性を発症した人の喫煙歴を聴取すると、患者さんのおおよそ4人に3人が、喫煙者・喫煙経験者(※1)であることがわかるそうです。

 

「喫煙が疾患のリスクを高めているのは明らかです。患者さんの男女比は日本では3:1で男性が多いのですが、これも喫煙歴の男女差が一因となっています(※2)」

 

では、喫煙が加齢黄斑変性に与える具体的な影響とは?

 

「加齢黄斑変性とは、加齢とともに、網膜の中心部である、ものを見るために重要な黄斑という部分に異常をきたす病気です。喫煙によって、網膜色素上皮という細胞の機能が乱れ、萎縮させてしまうので、それが病気の発症や視力低下に影響すると考えられます」

 

また30代を過ぎるころから、網膜色素上皮の下に脂がたまりやすくなり、「いわゆる“目のメタボ”状態になる方が増えてきます。たまった脂は過酸化脂質になって慢性炎症を引き起こす原因となります」

 

加齢(老化)とは、体内に老廃物が溜まり、酸化変性していくこと。いわば、体が「錆びていく」こと。喫煙は体内物質の酸化を促進するという点で、目の加齢変化や疾患リスクを高めているのです。

 

タバコは10年やめるとリスクが半分になる

タバコは目にも良くないと知っても、「もう散々吸ってきたから、今さらやめても…」と思う人もいるかもしれません。ですが、一日も早くやめたほうがいいというのが安川先生の考えです。

 

「加齢によるの目の病気は、85歳くらいまで疾患のリスクが上がり続けます。タバコを吸い続けていると、そのリスクが加速度的に上がっていくということになるのです。(※3)

 

喫煙習慣のある人が10年間タバコをやめると、病気のリスクが半分以下になるという報告が上がっています。(※4)例えば、現在60歳の方は85歳まで25年ありますね。今すぐやめれば70歳で効果が実感できるはずです。一刻も早くタバコをやめて、加齢変化の勢いを生理的なレベルに戻し発症率を下げましょう」

 

タバコをやめた患者さんに話を聞くと、「やめてよかった」という声が多いそうです。家族には、会話を増やすことで禁煙によるストレスを軽減する協力をしてもらうといいとのこと。「自分はやめられない」と決め付けないことが大切です。

 

患者さんの人生において、目で困らないようにしたい

加齢黄斑変性は、体質という点での遺伝要因と、喫煙や食生活という環境要因が合わさった病気なので、さまざまな角度から予防・治療を考える必要があります。

 

「内科の医師から、禁煙パッチ活用の指導をしてもらうことはあります。あとは、血圧や肥満など成人病関連の要因と間接的に関わってくるので、BMIの改善や血圧の管理については情報を連携するようにしています」

 

目の予防や治療について、できることは何でもやるという安川先生。目を守るためには、禁煙とともに、酸化を抑えるビタミンをサプリメントや緑黄色野菜で摂取し、食事や適度な運動など、生活全体の見直しも重要になってきます。

 

「その方の人生において、目で困らないようにするのが眼科医の仕事。生活習慣も考慮した上で治療をすることを心がけています」

 

後編では、禁煙の指導や治療についてうかがいます。

 

引用元:

※1, 2 Tamakoshi A, et al, Br J Ophthalmol. 1997:901.

※3 Tan JSL, et al. Arch Ophthalmol. 2007; 125: 1089.

※4 Delcourt C, et al. Arch Ophthalmol. 1998; 116: 1031.

 

安川先生2

安川 力(やすかわ つとむ)

名古屋市立大学

 

略歴

1993年 京都大学医学部卒業

1994年 北野病院

2000年 京都大学大学院医学研究科視覚病態学 助手

2000年 ドイツ・ライプチヒ大学留学

2004年 倉敷中央病院

2005年 名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学助手

2007年 名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学准教授

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