視覚障害のある人とない人の異文化交流を進めたい<前編>

~名刺の点字加工活動に取り組むNPO法人 視覚障がい者支援協会 ひかりの森~

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 埼玉県越谷市にあるNPO法人「ひかりの森」は、点字教室や音声パソコンの指導、移動支援といった自立支援プログラムなどを通して、見えない・見えにくい人たちが自分らしく生きることをサポートする組織です。

どんな思いで立ち上げたのか、代表の松田和子さんに話をうかがいました。

 

「一人じゃない」とわかる場所

松田さんは、網膜色素変性症と工事現場での転落事故で、20数年前にほぼ目が見えなくなりました。

 

「自分が見えなくなるなんて、思ってもいなかった。ましてや、視力が失われたくらいで障がい者なの?って。どうすればいいのか情報も入ってこない。保健所や市役所に行って聞いても、患者の会がなかったんです」

 

どんな福祉サービスがあるのかも全くわからない。他の人はどうしているのか。情報を持っている人だけがサービスを受けられて、知らない人は受けられないなんておかしいという思いから、当事者が集まれる会を作ろうと決心されたそうです。

 

「NPO法人を設立したのは2010年の4月です。現在は60数名の方が利用されています。初めての方は、まず電話で相談を受けて、相談支援事業所につなぎます。障がい者になってしまったと泣く人も多いけれど、ここで『一人じゃない』とわかると元気を取り戻してくれます」

 

見えない、見えにくい世界の中で悩んでいた人たちに、一筋の光がさす場所。それが「ひかりの森」でありたいと松田さんは願っています。

 

「やってどうなりたいか」「どう生きたいのか」が大切

「ひかりの森」では、「地域活動支援センター」として点字教室や音声パソコンの指導などの自立支援プログラムや、「相談支援事業所」での福祉サービスの案内などを行っています。

 

「利用者さんご自身でプログラムを決めます。月曜日は点字、木曜日は白杖を使っての移動支援など、自分に必要なこと、やってみたいと思うことに取り組んでいます。それ以外にも、月に1、2回は他施設での啓発活動、地域交流、そしてスポーツレクリエーションなども行っています」

 

松田さんは、互いに尊重しあうことをベースに、「ひかりの森」の目指すことを3つ挙げてくれました。

 

「1つめは目標を立てて情報やスキルを習得すること。2つめはいろんな人とコミュニケーションすること。3つめは誰かに貢献すること。障害を持っていても、誰かの役に立ちたい、貢献したいという思いはとても強いのです」

 

人それぞれ、どんなふうに生きたいかは違います。その思いを尊重しつつ、しっかりと目的意識をもって活動する。

 

「やること」よりも、「やってどうなりたいか」なのだと松田さんは言います。 「パソコンで買い物したい、音楽を聴いて楽しみたい、どんなことでも良いのです。見えないからこそ先を見ることが大事です」

 

いろんな人が交じり合い、助けあってこそ社会

中途失明、中途視覚障害が増えている昨今。病気や事故以外でも、スマートフォンによる目の負担も問題視されていて、見えなくなること、見えにくくなることは決して他人事ではありません。

 

「これだけ中途の視覚障がい者が増えていても、福祉に携わっている人でさえ、視覚障がい者への対応を知らないケースが多い。高齢者施設に見学に行ったら、職員の方が目の見えないお年寄りに言葉をかけず、肩を押して椅子に座らせていました」

 

見える人と見えない・見えにくい人が日常的に交流することによって、「知る・わかりあう」ことができるのでは、と松田さんは言います。

 

「いろんな人が交じり合ってこそ社会でしょう。障害のある人に声をかける、声をかけられる関係が普通になってほしい。年齢の違い、性別の違い、国の違い、障害の違い、すべて異文化交流だと思います」

 

2020年には東京でのオリンピック・パラリンピックが控えています。「知りたい・わかりあいたい」と思うことから異文化交流は始まるはず。松田さんの言葉を心にとめておきたいものです。

 

後編では「ひかりの森」の具体的な活動について、お伝えします。

 

NPO法人 視覚障がい者支援協会「ひかりの森」   

http://npo-hikarinomori.com/

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