50代以上の方は加齢黄斑変性に要注意<前編>
~見え方に違和感があったらすぐに眼科へ~
年齢を重ねるとともに目も見えにくくなりますが、それを「年だから」とか「疲れているから」と放っておいてはいけません。見えにくさは、加齢黄斑変性の症状の一つでもあります。加齢黄斑変性について、岡山大学 眼科学分野教授、白神史雄先生にうかがいました。
物がゆがんで見えたら危険信号
加齢黄斑変性とは、網膜の中央にある「黄斑」という部分が異常をきたすこと。年齢を重ねた人ならば、誰にでも発症する可能性のある病気です。
自覚症状としては、物がゆがんで見えたり、ぼやけて見えたり、あるいは中心部分が暗くなったりすることがあります。このような症状については、疲れや寝不足などが原因だと思い込んで見過ごしてしまうこともあるかもしれませんが、それは早計です。
「疲れ目や寝不足が原因であれば、しばらくすれば見え方は元通りになります。ですが、一日中続くようでしたら病気の可能性があります。すぐに眼科にかかって診察を受けるようにしてください。」
とくに、50代以上の方は加齢黄斑変性の可能性もあるため注意が必要です。安易な自己判断は危険です。
まずは片目がみえにくくなる
原因が加齢黄斑変性であった場合、「少し休めばだいじょうぶ」と思って病院に行かずにいると、症状はどんどん進行します。日々の進行は小さくても、一週間、一か月といった単位では、確実に見えにくくなっていきます。
「はじめは、ぼやけたりゆがんだりといった見えにくさを感じますが、しだいに視力自体も低下します。ですので、初期症状のうちに診察を受けてください。」
また、症状は両目ではなく片目に現れます。「左か右かは人によりますが、まずは片目が見えにくくなります。両目に発症する人は、全体の1-2割です。」
ただ、片目が見えるからいいというものではありません。両目で物を見ていた人が片目だけになると、体や動きのバランスがとりにくくなり、転んだり躓いたりするようになります。片目の不調を感じた時点で医師の診察を受けましょう。
早期発見・早期治療で病気の進行を食い止める
加齢黄斑変性は「社会的失明」を引き起こすと言われています。「社会的失明」とは、完全に視力を失うわけではないけれど、社会生活を営む上で支障のある状態ということです。 「タクシーやバスの運転手など、第二種免許が必要な人は、片目の視力が失われたら仕事ができなくなります。働きざかりの人にとって、仕事ができなくなるのは、つらいですね。」
日常的な生活については、片目が機能していればそれほど支障はないでしょう。ただし、年齢が高くなればなるほど両目に発症するケースが増えてきます。
「80歳以上になると、両方の眼に発症するリスクが高まります。そうなると、本や新聞が読めなくなり、テレビも見られなくなる。つまり、老後の楽しみを奪われてしまうのです。いまは早い段階で治療を始めれば、ある程度視力を維持することができます。早期発見・早期治療が大切です。」
楽しく穏やかな老後を過ごすためにも、目に異常を感じたら眼科に行くことをおすすめします。
白神 史雄(しらが ふみお)
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 眼科学分野 教授
******* ご経歴 ********
1980 岡山大学医学部卒業
1984 岡山大学医学部大学院修了
1997 岡山大学医学部眼科助教授
1998 文部省長期在外研究員 エモリー大学
2003 香川大学医学部眼科教授
2013 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 生体機能再生・再建学講座 眼科学分野 教授
日本眼科学会 常務理事
日本網膜硝子体学会 常務理事