お化粧は、社会参加するための武器になる<後編>

~「ブラインドメイク」の実践~

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大石華法さんは視覚障がい者が自分でメイクをする「ブラインドメイク」を開発し、メイクができるようになるだけでなく、それを仕事に生かせるような仕組みを作り上げました。

 

「メイクをすると社会がやさしくなる」

2013年に日本福祉大学大学院に入った大石さん。視覚障害や福祉について専門的に学びはじめました。ある学会でブラインドメイクについて発表したところ、“弟子入り志願”が殺到したそうです。

「視覚障害の当事者の方から、眼科の先生や福祉施設の方、歩行訓練士の方もいました。口をそろえて言っていたのは、『見えない人が自分で化粧するなんて、ムリだと思っていました』ということ。盲学校の先生でさえ、そう言っていましたね」

鳥取や沖縄から飛行機で通ってくる“お弟子さん”もいたそう。ブラインドメイクを習った彼らは、自分のコミュニティーの中でどんどん広めていきました。そして、ブラインドメイクの効果については、当事者の方たちが身をもって証明してくれています。

「皆さん、メイクをしたときの方が、声をかけてくれる人が増える気がすると話してくれます。メイクをすると、社会がやさしくなる感じがする、と。それは、ご自身の表情や気持ちの変化が周りに伝わるからなんでしょうね。ある視覚障害の方は、『お化粧は、わたしが社会参加するための武器なんです』と言ってくれました」

大石さんはメイクが社会との接点になると期待が持てたそうです。

 

 

QOL(クオリティ・オブ・ライフ)が上がるという喜び

「視覚障害を持つ当事者の声を社会に届けるのが、わたしの仕事」と言う大石さんは、大学院の修士論文で、視覚障がい者がメイクをすることの効果について研究発表しました。

「自分でメイクをすることによって、口数が増える、外出の回数が増える、人と会う回数が増える、ということがわかりました。昔、視力があった時代に交流していた友人たちと、勇気をもって会えるようになった人もいました。そのためにも、メイクをしてもらうだけではなく、出かけたいときにいつでも自分でメイクできることが大切なんだと学びました」

ある時、ブラインドメイクをマスターしたいと、先天性全盲のトランスジェンダーの方からメールが来ました。髪形や服装は女性らしいものでしたがメイクだけができておらず、何回か通ってできるようになると、うれしそうに帰っていきました。

「年齢や性別に関係なく、ブラインドメイクでQOLが上がるとしたら、こんなにうれしいことはありません。ぜひ、そんなサポートを続けていければと思っています」

 

 

当事者が前に出ることが大事今は、視覚障がい者にブラインドメイクを指導する「化粧訓練士」の養成に力を入れています。訓練士を養成する指導者は、ブラインドメイクをマスターした視覚障がい者の方たちです。

「見える人同士で教えると、どうしても『この色を』とか『そこのパレットを』と言ってしまうし、道具を手渡ししてしまうんです。それは、ただの『ビューティアドバイザー』です。介護の現場から来る方は、どうしても善意でやってあげてしまうんですね。でも、視覚障がい者は、見えないだけで『できない人』ではない。そこを習得してもらうには、ブラインドメイクをマスターした方たちが、自分の経験や感覚を元に教えたほうが、ポイントが的確に伝わって効果的です」

教える人たちには「化粧訓練士指導員」という資格を設け、仕事として活躍していただくことになりました。メイクを覚えて自信をつけ、指導員という仕事を得て収入も得る。大石さんは、“当事者が前に出ることが大事”と言います。

「当事者の心と言葉に寄りそい、当事者が前に出るサポートをする。これが、ブラインドメイクを通してわたしがこれからも実践していきたいことです」

 大石先生

大石華法(おおいし・かほう)さん

2010年に、日本ケアメイク協会を立ち上げ、同年に一般社団法人日本ケアメイク協会を設立。2020年2月より公益社団法人化粧療法協会、その後内閣府より認可を受け、公益社団法人国際化粧療法協会として医療、福祉、美容に貢献する活動を続けている。

 

公益社団法人国際化粧療法協会

https://caremake.or.jp/

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