糖尿病によって発生する目の病気<前編>

~糖尿病性網膜症は定期検診が必須~

 

11月14日は「世界糖尿病デー」。世界各国で増加の一途をたどる糖尿病について、予防や治療の意識を高めるために定められ、日本でも、全国各地でライトアップや、様々な糖尿病の啓発イベントが行われました。

最近の厚生労働省のデータによれば、日本人の20才以上の男性の6人に一人、女性の11人に一人は、糖尿病あるいは糖尿病が強く疑われる状態だとされています。(※1)

糖尿病は生活習慣病であり、食生活の改善が必要なことはよく知られています。血糖値をコントロールしなければ症状が悪化し、やがては合併症を引き起こすことにもなりかねません。

糖尿病の三大合併症は、腎臓と末梢神経、そして目(網膜)にも現れます。「糖尿病と目の病気」について、今月と来月の2回に分け、名古屋市立大学の教授、小椋祐一郎先生にお話を伺います。


糖尿病網膜症がご専門の小椋先生は、糖尿病から目の病気に至る過程について、こう説明してくださいました。
「血糖値が高くなると、網膜の血管が傷んで細い血管が詰まったり変形したりします。すると、その傷んだ部分から出血を起こすようになります。このような血管の変形や出血により網膜症と診断され、より詳しい検査が必要となる場合があります。」

網膜症の怖いところは、痛みなどの自覚症状がないこと。眼底出血していても、自分でそれを認識することができないのです。また、気づいたら両眼共に網膜症が進行していたという事も少なくありません。そのために、糖尿病と診断されたらまず眼科に行くことが大切です。                                                                             

「眼科の専門医が診察しなければ、小さな出血等の網膜症の初期症状はわかりません。知らないうちに網膜症が進行していて、気づいたときには失明ということもありうるのです。網膜症については、物が見えにくいなどの自覚症状が出てからでは手遅れです。糖尿病と診断されたら、まず眼科にかかってください。」             

私たちは、痛みや苦しみなどの異常を感じたときに病院に行きますが、糖尿病性網膜症については症状の有無に関わらず、定期検診が欠かせません。                                                   

「年に一回は、必ず眼科の検診にきてください。眼科専門医のいる病院ならどこでもかまいません。医師は眼底を見て、網膜症の進行度合いを確認します。緩やかな進行であれば、また翌年まで様子を見ますが、状態によっては治療のタイミングも考えなくてはなりません。『何でもないからまだ大丈夫』という自己判断は大変危険です。」

検診自体、体の負担になることはありません。医師が眼底を見る、眼底の写真を撮る、視力検査をするといったもので痛みはなく、半日もあればじゅうぶんです。                                                

「一つだけ注意していただきたいのは、眼科検診の後は車の運転を避けるということ。検査のときに、散瞳薬という瞳孔を大きくするための点眼薬をさすのですが、その効果が収まるまでは近くが見えにくくなるためです。ですが痛みはないので、安心してください。」

今現在、網膜症の進行を止める治療薬はなく、レーザーや手術、目の中への注射のような対症療法に頼るしかありません。損傷した血管を元に戻すことはできませんが、進行を遅らせる努力はできますし、医師の判断で適切な時期に手術治療を行えば、これまで通り見える生活を維持できることも多くなっていますし、失明という最悪の状態を防ぐことはできます。            

糖尿病と診断されたら眼科の診察を受けること。定期検診を欠かさないこと。これが大切だと小椋先生は強調されています。


次回は、網膜症の進行の具体的なプロセスと、日常生活の中で気をつけたいことを解説します。

小椋 祐一郎(おぐら ゆういちろう)
名古屋市立大学大学院医学研究科教授

******* ご経歴 ********
1980  京都大学医学部卒業
1989  イリノイ大学医学部眼科 留学
1995  京都大学大学院医学研究科 助教授
1997  名古屋市立大学医学部 教授
2002  同 大学大学院医学研究科 教授
2013  同 大学病院 副病院長

学会役職等  
日本眼科学会常務理事・評議員、日本網膜硝子体学会常務理事、日本糖尿病眼学会理事長、日本眼循環学会理事、日本微小循環学会理事 など

主な著書
「硝子体手術 広角観察システムの基礎と応用」 文光堂、2012年
「眼手術学 網膜・硝子体(I、II)」 文光堂、2012年、など多数

 

(※1)厚生労働省 平成24年「国民健康・栄養調査」

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