自分の命は自分で守る訓練を<後編>

~視覚障害のある人への防災教育~

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未曾有の災害に、見えない・見えにくい人はどう対応すべきか。それを盲学校の生徒たちに、体験を通して教えているのが、国立研究開発法人 防災科学技術研究所 客員研究員、花崎哲司さんです。避難所での工夫なども教えてくれました。

 

体験して知りたいという学習意欲が旺盛な生徒たち

盲学校の生徒たちは、普段は決まった道を通って移動しています。ですが、災害時にどこかに移動するためには、より安全な道を通らなくてはなりません。そのために花崎さんは、地域の人たちにも参加してもらい、生徒たちと何人かのグループに分かれて“防災町歩き”を実施しました。「従来は『運動場に避難しましょう』という対応でしたが、運動場も液状化のリスクがあります。そこで、古文書や古地図を調べて町歩きをしたんです。『ここは、六尺の津波が来たという記録があるから、このくらいの高さだよ』と手で示したら、『僕の背の高さくらいある。ここを通るのは危険だね』と理解してくれました。」

生徒たちは、町歩きの経験一つ一つが自分の命を守るためのものだとわかっています。ですから、シミュレーションとはいえ真剣に取り組みます。「遊びじゃないということは、彼らはよくわかっています。とにかく、体験して知っておきたいという学習意欲が強いんです。」

 

これから先も、ずっと自分の身を守るために

四国では人口の30%以上が高齢者(※1)。そして、障害を持つ人の割合が5%と考えると、全人口の4割近くが何らかの支援が必要な人ということになります。それを生徒たちに話したら、「僕たちはこれから大人になるんだから、できることは自分でできるようにならないとね」と言ったそうです。「私が生徒たちに授けているのは、体験とヒントなんです。あとは自分で考える。非常時には、一つの方法だけを知っていればいいのではなく、いろんな方法を知っておくことで命を守る可能性が高められるのです。」

土砂崩れの体験として、箱庭の中に斜面や谷や川や家屋を作り、その斜面を一気に崩すデモンストレーションをしたとき、一人の生徒がこう言いました。「もし山が崩れてきたら余計に避難に時間がかかるので、大人になっても斜面に住むのはやめておきます。僕らは、災害の少ないところに住んでおく方がいいですよね。」

花崎さんの防災教育は、今何かあったときに命を守るだけでなく、これから先もずっと、自分の命を守ることにつながっているのです。

 

避難所でみんなを救う“ガイドロープ”(避難・誘導用)

見えない・見えにくい人は、避難所に行ったから安心というわけに行きません。

避難所への移動や、避難所で支援を受けること自体が困難になります。行政も含めたすべての人たちが被害者になるのです。初めての避難所では、どこに向かってどう歩けばいいのかわからないのです。そんな時は、盲導犬も頼りになりません。「見えなくて、避難所自体に入れない人もいます。それなら、避難所の床に、点字ブロックの代わりの“ガイドロープ”をはればいいんですよ。車椅子でつまずかないように、太さ9ミリ程度のロープを床面に固定する。蓄光塗料含有のロープであれば、晴眼の人は夜でも光るからわかる、見えない人は足で探ればわかる。ロープ一本で、みんなが助かります。これをガイドロープと名付けました。」

 

▼ガイドロープの試行(写真提供:花崎哲司先生)

GuideRope

▼色々な太さのガイドロープ(写真提供:花崎哲司先生)

GuideRope

私たちは、人に迷惑をかけないことがいいことだと教えられてきました。だから、困っていることがあっても人に助けを求めるのを躊躇してしまいます。見えない人はなおさらです。「そんなときは、肩の後ろくらいから、そっと『何かお手伝いしましょうか』と言ってあげてほしいんです。正面から言われると『いえ、いいです』と遠慮しがちですが、後ろからそっと言われたら、顔を後ろに向けることで柔らかな人間関係が生まれますから。」

自分の身を守る方法を知ること、互いに支え合う気持ちを持つこと、そして頼りあえる柔らかい人間関係を作ること。これからの時代を生きる私たちの課題です。

 

※1 引用元:総務省『住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(平成31年1月1日現在)』

 

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