未熟児網膜症の経過観察<後編>

~医師の診察と家庭の観察が“両輪”~

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前編では、経過観察中の通院についてお伝えしました。後編では、家庭での観察の仕方について、眼科専門医の寺崎浩子先生に教えていただきます。

 

顔写真を撮る

未就学児の場合、毎日眼の様子をチェックする、点眼を処方されている場合には予定の時間に行うなど、親御さんがしなくてはならないことがいくつかあります。

「できれば、片目ずつの見え方チェックもしてほしいところです。眼の様子については、充血していないか、また眼が寄って斜視になっていないかを確認するために、正面から子どもさんの眼を見て、時々スマートフォンで写真を撮っておくといいですね。それを診察時に医師に見せれば、いつから変化したかがわかりますので」

もし視力が十分ではない場合、学校に通うようになると、見えないことで認識できる情報が少なくなり、先生は「わかるはず」と思っていることがわかっていないという食い違いが起こることがあります。

「先生には、事前に眼のことを話して、お子さんの状況を理解してもらいましょう。わからないことで周りと食い違いが起こり、お子さんがストレスを感じることもありますので。もしお子さんがストレスを感じていたら、できていることをほめて励ましてあげてください。ほめてもらうと本当にうれしそうにするのです」

 

眼に重力がかかることはNG

学校に上がると、子どもはどんどん活発になっていきます。親御さんとしては、元気に学校生活を送ってほしいと思う一方で、眼についての心配が募ることでしょう。

「治療して完治した状態であれば、そんなに敏感にならなくても大丈夫です。ただ、未熟児網膜症がある程度進行していたものであった場合、網膜剥離にはなりやすいので、眼に重力がかかるようなこと、たとえばジェットコースターに乗ったり、でんぐり返しや倒立などのマット運動をしたりするのは避けたほうがいいです。走るのは水平運動なので問題ないですし、眼は結膜でおおわれているのでプールも大丈夫。飛行機に乗るのも特に禁じてはいません」

もし、学校から「禁止事項を教えてほしい」と言われたら、眼科医に相談しましょう。

「体育の授業や運動会など、学校の先生からの質問を親御さんから預かることはあります。そのときは、書面にしてお渡ししています」

もう一つ、子どもがやりがちなのが「眼押し」。まぶたの上から眼球を押さえてしまうことです。

「痛いとかかゆいということではないのですが、気づくと眼を押さえていることがあります。これが原因で眼に炎症を起こしたり網膜剥離が起こったりすることがあるので、親御さんが気づいたらやめさせてください」

 

経過観察では家庭での些細な気づきが大切

眼科では、定期的な診察とともに“その子に合った正しいメガネ”を作る処方箋を出します。大人は、しばしばメガネ店に行って見え方だけ合わせて買うようですが、本来メガネは眼科医が処方箋を出して作るものなのです。

「未熟児網膜症の既往があるお子さんのメガネは、正確な度数だけではなく、眼の位置や角度、認知能力もきちんと検査した上で作らなければなりません。それを忘れずにいてください」

患者さん側は「何か異常があったときに病院に行く」と思っているかもしれませんが、寺崎先生によると、医師の考えは違うそうです。

「お子さんに、ちょっとでも変わったことがあったら病院に来てください。何か問題があればすぐに対処できますし、何もなければ『よかったですね』となって安心できますよね。『こんなことくらいで病院に』なんて思わなくていいんです」

医師は診察によって状態を把握しますが、いつもそばにいる親御さんにしか気づけない変化もあります。経過観察では、些細な気づきが大切なのです。

「状態の変化は、早く気づけば気づくほどいいのです。経過観察は、病院での診察と家庭での観察の“両輪”があって初めて成り立つもの。ぜひご家庭でも注意して見てあげてください」

 

Dr. Terasaki

寺﨑浩子先生

名古屋大学未来社会創造機構 特任教授

1980年金沢大学医学部卒業。1984年名古屋大学大学院修了。1999年同大学大学院医学系研究科頭頸部・感覚器外科学講座教授。2020年4月より名古屋大学特任教授。日本眼科学会前理事長。網膜硝子体疾患、眼科手術全般を専門とし、研究・診療において眼科をリードしてきた。

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