未熟児網膜症 未熟児に起こりうる目の病気<前編>

~未熟児網膜症とは~

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「未熟児網膜症」という言葉自体、聞き慣れない方も多いかと思います。どんな症状なのか、その背景にはどのようなことがあるのかなど、長年、未熟児網膜症を含む小児の難治性眼科疾患の診療に携わっている国立成育医療研究センターの東範行先生に教えていただきました。

 

目の網膜の血管が間違った方向に伸びる

目の中にある神経の膜である網膜には血管がありますが、発生の段階で後方の視神経の入り口にある太い血管から枝分かれして、前方も網膜の端に向かって細く長く伸びていきます。

 

妊娠期間を40週とすると、14週目くらいから網膜の血管が伸び始め、30週位に端に達します。ですが、未熟児の場合は、血管が網膜の端にとどく前に生まれてしまいます。

 

「生まれたあとも、そのまま順調に網膜の中で端に向かって血管が伸びて行けばいいのですが、そうはいかない場合があります。赤ちゃんにとって、母体の中はとても安定しているのですが、外に出ると急激な環境の変化にさらされます。そうすると、血管がまったく違う方向に伸びていってしまうことがあるのです。これによって網膜が傷んで視力が低下し、重症であれば失明することもあります」

 

未熟児で生まれたことによって、本来血管が伸びるべきでないところに伸びてしまって病気が引き起こされるのが未熟児網膜症。

 

「目は両目同時に成長するので、多少の左右差はあっても、病気はほぼ両目に起こることが多いです。もちろん赤ちゃん本人には自覚症状はないですし、何かを訴えることもできないので、病変があるかどうかを眼科医が定期的に診察して、早期発見に努めています。」

 

未熟児の成育管理ができる施設での治療

未熟児網膜症は未熟児で生まれたからといって、必ず発症するとは限りません。ですが、小さく生まれた上に発育が順調でない赤ちゃんの場合には、可能性が高く、注意が必要です。聞き慣れない病名とはいえ、昔からある病気だそうです。

 

「周産期医療の発達のおかげで、昔だったら生まれてくることができなかった出生体重1000グラム以下ことに最近は500グラムにも及ばない赤ちゃんの命が助かるようになりました。その分、昔よりも未熟児網膜症が増えていますし、重症化しています。」

 

未熟児網膜症は、未熟児の成育を管理できる病院でなければ診察や治療ができないのですが、最近はそういう病院が増えています。

 

「大学病院や総合病院には新生児集中治療室(NICU)があり、新生児科の医師がきちんと管理をしています。眼科医は、新生児科の医師と連携して検査・診察をしています。」

 

医療の発達とともに患者が増えてきた症状ではありますが、その進行を防いで赤ちゃんを守るための医療もまた、日進月歩なのです。

 

いかに網膜のダメージを抑えるかが勝負

目をカメラに例えると、水晶体がレンズ、瞳はレンズのしぼり、神経の膜である網膜はフィルム。そのフィルムに写った像の信号が、神経に伝わって脳に届いて「見える」のです。まずはこのことを理解しておきましょう。

 

「未熟児網膜症では、本来血管が伸びるべきでない場所に血管が伸びていきます。しかし、間違った方向に伸びた血管は、その先で十分な栄養を得られずに枯れてしまいます。枯れた血管は収縮し、網膜の表面をひっぱります。こうして網膜が壁からはがれてしまうのが網膜剥離です。」

 

つまり、物を見るときのフィルムの役割をする網膜に病変が起こるのが、未熟児網膜症。症状が進行して網膜剥離になると、網膜(フィルム)の機能が衰えることになり、その程度次第では失明しかねません。

 

「未熟児網膜症は、生まれてからだいたい1カ月くらいで起こり始めることが多いです。そして、数か月で一気に悪化します。ですので病変発見から数か月の活動期と呼ばれる時期が勝負。進行しないように治療をして、血管の増殖がおさまる瘢痕期に入ればひと安心です。」

 

瘢痕期に入るまでに、いかに網膜のダメージを抑えるかが、未熟児網膜症の診察・診断・治療の大切なところです。 後編では、治療や家族の理解、その後の成長についてお伝えします。

 

国立研究開発法人 国立成育医療研究センター

https://www.ncchd.go.jp/index.html

 

未熟児網膜症について

https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/retinopathy.html

Dr. Azuma

 

東範行(あずま のりゆき)

慶應義塾大学医学部卒業。国立小児病院、後にナショナルセンターに改組されてから現在の国立成育医療研究センターまで一貫して、未熟児網膜症を含む小児の難治性眼科疾患の診療に携わっている。併せて遺伝や再生医療のトランスレーショナルリサーチ、さらに最近は生命科学の基礎研究も行っている。日本小児眼科学会理事長として、小児眼科医療の学問振興に努めるとともに、学会の専門家と一緒に書籍を刊行している。

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