未熟児網膜症 未熟児に起こりうる目の病気<後編>

~未熟児網膜症とは~

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未熟児で生まれた赤ちゃんに起こりうる未熟児網膜症。重症になりやすく進行も早いので、病変発見から数か月の治療が勝負だそうです。国立成育医療研究センターの東範行先生に、治療法などについてお話しいただきました。

 

早期発見・早期治療が重要

発生の過程で伸びる網膜の中の血管が、未熟児で早めに生まれて、間違った方向に伸びてしまうのが未熟児網膜症です。本来血管が伸びるべき場所に血管が伸びないと、その血流が来ない場所から「血管内皮増殖因子(VEGF)」という物質が放出されます。

 

VEGFは血管を方向づける働きがあるので、それが目の中を漂っていると、血管はそれによって間違った方向に伸びてしまうのが、病気の仕組みになっています。

 

「初めの段階の治療としては、このVEGFの放出を抑える治療をします。症状が進行して新生血管の収縮が始まったときには、軽い網膜剥離が始まっています。網膜剥離が起こりはじめたとき、直ちに手術をしなければ剥離が広がってしまって、網膜の機能は衰えます。一度衰えた機能は元に戻らないので、できるだけ早い治療が大切です。」

 

年に1~2回の検査と専門家との連携が大事

治療を終えて網膜の機能を守り、数か月を経て症状が落ち着いたらまずはひと段落ですが、このままずっと網膜に問題が起こらないとは限りません。

 

「治療した網膜症自体は再発しませんが、網膜のどこかが傷んでいる可能性はあります。もしかしたら、残っていた弱い新生血管から出血するかもしれない。成長とともに、網膜の薄い部分がひっぱられて穴があいてしまうかもしれない。穴があいたところから水が入ってしまうのは、ひっぱられるタイプとは別の網膜剥離です。ですので、病気が落ち着いてもしばらくは年に数回、学童から大人になるまでも1年に1~2回は眼科で検査をすることが必要です。」

 

治療をしたからといって、通院をやめていいということではありません。網膜にリスクを抱えているのは変わらないので、必ず定期的に検査を受けるようにしましょう。もし視力に障害が残る場合には、就学時の相談も欠かせません。

 

「3歳くらいになると、どのくらいの視力が得られるかがわかります。状態によっては、どんな学校を選ぶか、どんな器具で視力を補完するのか。学校に入ってからはどんな生活、勉強の方法がいいのかなど、学校の先生や専門の方に相談した方がいいですね。」

 

医師はもちろん、いろいろな人と連携して子どもの人生を考えていくことが大切です。

 

物ごころついたら、本人の自覚も欠かせない

未熟児網膜症という病気は、患者本人が赤ちゃんであるため保護者の理解が不可欠です。

 

「医師からの説明という点ではすべての病気に共通しますが、まずは基本的な目の構造や機能をお話しして、どのような理由でどこに病変があり、それによって現在はどんな状態なのか。そして進行するとどうなるか、治療にはどんなものがあり、今できる治療は何かというふうに、病気の全体像と現在の状態を説明するようにしています。それを理解しておいていただけたら、もし急に状態が変わっても対応することができます。」

 

場合によっては、親だけでなく、祖父母に説明することもあるそうです。できるだけ多くの周囲の人に病気を理解しておいてもらうことが、患者さんの成長の助けになるからです。

 

「もちろん、患者さん本人も、ある程度物事がわかる年齢になったら、病気のこと、治療のことを知っておいた方がいいです。検査を受けることや日常的に気をつけるべきことなど、自覚をもつことが必要ですからね。」

 

国立研究開発法人 国立成育医療研究センター

https://www.ncchd.go.jp/index.html

 

未熟児網膜症について

https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/retinopathy.html

Dr. Azuma

 

東範行(あずま のりゆき)

慶應義塾大学医学部卒業。国立小児病院、後にナショナルセンターに改組されてから現在の国立成育医療研究センターまで一貫して、未熟児網膜症を含む小児の難治性眼科疾患の診療に携わっている。併せて遺伝や再生医療のトランスレーショナルリサーチ、さらに最近は生命科学の基礎研究も行っている。日本小児眼科学会理事長として、小児眼科医療の学問振興に努めるとともに、学会の専門家と一緒に書籍を刊行している。

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