3D楽譜が開く、目の見えにくい方による楽器演奏の可能性

音楽には、不思議な力があります。落ち込んだときも、お気に入りの音楽を聴くと気分が明るくなったり、前向きな気持ちになれたりしますよね。また、音楽鑑賞が趣味という方の中には、「いつかは自分で楽器を演奏してみたい」、そうお考えの方も少なくないのではないでしょうか。ただ、演奏の技術は簡単に身に付くものではなく、ましてや、目の見えにくい方にとっては、なかなか一歩が踏み出しにくいかもしれません。
例えば、点字楽譜の読み取りは、目の見えにくい方々、特に小さなお子さんにとっては簡単なことではなく、ストレスのたまる体験となりがちです。また、せっかく点字楽譜を習得しても、細かい演奏のニュアンスが翻訳過程で失われてしまうこともあります。
そんな中、斬新な動きが出始めています。3D楽譜、つまり、手で触れることのできる楽譜が発明されたのです。この3D楽譜を発明したのは、米国のウィスコンシン大学で音楽の博士号を取得したばかりの盲目のピアニスト、キム・イェジさんです。キムさんのアイデアでは、楽譜上の音符や五線、そのほかの音楽記号が3Dで印刷されるため、点字楽譜よりも高い精度で、楽曲を理解することが可能となります。
3D楽譜は、音楽教育の場においても、大きな可能性を秘めています。視力レベルの異なる子供たちが、同じ楽譜を使って、一緒に作品を学ぶ事ができるようになるのです。
目の病気を持ちながらも、15歳のときに本格的にピアノを習い始めたというキムさん。自身の発明が、同じように目の見えにくい子供たちの役に立つことを願っているそうです。
3D楽譜の登場で、音楽が本当の意味での「世界共通言語」になる日も、近いかもしれません。